Last modified: Sun Jun 4 12:13:39 JST 2017

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第29回介護福祉士国家試 問題および解答速報サイト集

目次

合否ライン

実技試験がある受験生には17日に筆記試験の合否通知が送られます。その合否基準点は、実技が免除される受験生と一緒です。

関連する掲示板は以下でしたが、

介護福祉士国家試験掲示板は、同じIPアドレスで幾つもの名を使い分けて酷い荒らし・結果が思わしくなかった人への侮辱・噓の得点で合格あるいは不合格だと惑わす釣り投稿が深刻で管理者さんが対応で疲弊させられ3/28まで閉鎖となりました。

ふくたろうさんのブログはアクセス稼ぎ目当てだろうとの心無い批判を浴び、閉鎖となりました。その意志を尊重しこの知恵ノートも点数の転記を取りやめます。

問題

肝心の試験問題の用紙をスキャンした物を以下に置いておきます。解答用紙もあります。

http://yahoo.jp/box/q1Jnv1

解答速報サイト

解答速報サイトは「介護のお仕事研究所」に【各社まとめ】第29回介護福祉士国家試験 解答速報という参考になるまとめ記事がありますが、私は「赤マル福祉」さんがイチオシです。

自動採点ページ

自動採点してくれ、判定も出してくれます。とても便利です。

以下はユーキャンの採点の入力画面の例です。

赤マル福祉の自動採点は、入力が科目ごとでちょっとやりにくいですが、分析のグラフも出ます。

なお、いち早く自動採点をWebで提出するような受験者は色々な情報に通じているなどで一般的な受験生より平均点が高いと思われます。ですから「みんなこんなに高得点なんだ…」と気落ちするには及ばないと思います。

試験を受けた感想

私は介護関係の知恵ノートを幾つか書いたりした関係で、これで自分が落ちたら恰好がつかないと自分に活を入れ、かつ私は単なる契約社員という事もあり (どこも採用してくれなかったためですが) 幸い受験勉強の時間も取れたのですが、試験を受けてつくづく感じました。

捻った問題ばかりだな。人の命を預かる介護職員が務まるような人なら、受験勉強する時間さえあればほとんどの人が合格できるだろう。でも忙しい介護職員に受験勉強をする時間などどうやって捻り出せるのか。現場ではなくてはならない有能な職員ほど多忙で勉強に時間が割けず、するとこの筆記テストのせいで介護福祉士が遠のくな。

とはいえ、前回までであれば、実務者研修を受けずに一発受験できたので、これでしたら、意地悪問題でも答えられる試験勉強も必要だったでしょうが、今回からは実務経験ルートでは全員が実務者研修を修了しています。問題を見ていると、「何のために実務者研修をやったのか」と思う、変な設問が目立ちました。実務者研修導入の意義からすれば、「研修で学んだ事が理解できていて肝要な事は覚えている → なら合格」が国試の目的であるべきです。ですから、実務者研修で学んだ時のテキストを復習しポイントを覚えていれば合格できる試験にすべきではないでしょうか。今までの国試同様、受験対策本を何冊も買って、受験のために時間を捻出し、受験テクニックを磨かなければ合格できないなら、それは「落とすための試験」であり、実務者研修の意義を否定しているのと一緒です。

介護職員が務まる人なら時間さえあれば合格できると私が考える理由ですが、福祉系高校生はほぼ全員が合格しているためです。国試に合格しなければいけないので3年次には受験対策勉強にも時間を割いていると思われます。それで、「もし介護職員が一年間休職して国試の受験勉強に専念したらどうなるか」と想像してみましょう。試験開始 → 問題用紙を開く → 「勝った!」となり、高得点間違いなしでしょう。しかし実際には受験勉強に専念するというのは現実的ではありませんから限られた時間で勉強し合格に漕ぎつけないといけない。これは、難しいです。

不適切問題

出題ミスと考える問題

試験中も「何だこれは」と思う問題が多く、試験後も気になって、幾つか掲示板を見ると、みんな「おかしい」と言っている問題がありました。そこで調べてみた所、「やっぱりおかしい」と思うに至りました。

問5 「ロコモティブシンドローム」という病気は存在しないので問題ミス。問題作成者は、医者でなくても ICD-10 (WHOが公表している「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」の第10版) や DSM5 (アメリカ精神医学会が出版する「精神障害の診断と統計マニュアル」。ICD と合わせて広く使われている) の分類ぐらいは知識として知っているべき。ロコモティブシンドロームなどという病名は、確認したが、 ICD-10 にも DSM5 の分類にも載っていない。すなわちこれは「五月病」「中二病」「共依存」のようなもので、世界的に病気とは認識されておらず、本物の医師が患者のカルテに病名として「ロコモティブシンドローム」と書くことはあり得ない。特定の団体が2007年頃から提唱した和製英語で海外では全く通用せず、提唱団体自ら「ロコモティブシンドローム」を和名としては否定し、運動器症候群と言い変えている有様。

こんな、架空にも等しい病気の対策など、あろうはずも無い。これは恥ずかしいレベルで、問題作成者はもう少し勉強すべき。ま…私は正解しましたが、社会的に実在するとは認識されていない「流行り言葉」にすらなっていないレベルの不正確な「病名」を答えさせるのは出題ミスであり、全員正解とすべき。実務者研修ではこんな言葉は出ていないのではないか?

ちなみに、ICD-10 の国際分類に載っていて国際的にまともに病気として認識されているのはサルコペニア(sarcopenia)の方です。(ICD-10 M62.84) 一方、フレイルの方は Frailty の訳とありますが、Frailty の国際分類に対応する日本語訳は「老衰」となっています。なんでも「日本老年医学会は高齢者において起こりやすい「Frailty」に対し、正しく介入すれば戻るという意味があることを強調したかったため、多くの議論の末、「フレイル」と共通した日本語訳にすることを2014年5月に提唱しました。」だそうですが、国際分類で既に定義されている病名を特定の団体が広い意味に変えて使おうと提唱するのがおかしい。フレイルも試験に出すべき病名ではないでしょう。

問22 災害時,避難所での高齢者への介護福祉職の対応ですが、「エコノミークラス症候群の予防のために運動をすることを勧める」なんでしょうが、そもそも全介助の人だったら避難していなくても最初から運動など無理。

バリアフリーを考え整理整頓された施設内なら杖で歩ける人でも、避難所の状況によっては足の踏み場もなく子供達が走り回る等で杖では転倒骨折の危険が高く、医療体制が壊滅している状況で大ケガされては命に関わるので臨機応援に安全策で車いすという方がむしろ正解でしょう。

なお「エコノミークラス症候群」も俗称です。これだけで問題作成者は医師ではなく問題を医師に確認してもいない事が明らかです。医師でない人間の作る医療類似問題は本当に理解し辛いですね。

問32  介護においてヒヤリ・ハット報告書と事故報告書とは分けて記載しなければいけないという法律・厚生省令・通知は存在せず問題作成者の俺様ルールに過ぎません。こんな禁令があれば事故防止のために情報を広く共有する目的で事例をデータベース化できない事になり矛盾します。厚労省はかつてリスクマネージメントマニュアル作成指針を出していましたが、これは国立病院向けの物ですし、今では失効していますが、厚労省の「医療事故情報収集等事業」にあるヒヤリ・ハット事例情報データベースはこちらから参照して下さい。をクリックすると日本医療機能評価機のページに飛んで、しかもヒヤリ・ハットと事故は同じデータベースで扱われています。

全国老人保健施設協会の事故およびひやり・はっと報告書(参考様式)(Word 形式)でも一緒になっています。

そもそも事故を未然防止する目的でヒヤリ・ハットを集めて活用しているので、危険な要因があったが結果論としてセーフだったから、運悪く事故になった事例と分ける、すなわち軽く扱うのではハインリッヒの法則を無視しているのと一緒という考え方もできます。

問題文の事故報告というのも「死んだ」「重い後遺症が残る」のような重大インシデントを指すあるいは含むのか、掃除したら薬が落ちていたのようなインシデントの事を念頭に置いているのか不明です。ヒヤリ・ハット報告書に関して聞いている以上、ただ事では済まない重大インシデントは含まないと解釈する方が自然に思えます。

介護では事故報告書は県あるいは市区町村に提出するもので、様式は保険者により異なっていますが (例:介護情報サービス かながわ) それなら国家試験で様式関係を問うのはおかしいです。

問33 軽度の認知症のJさん(78歳,女性)は、ホームヘルパーが前日に準備した夕食を食べておらず「これは私が食べていいの?」と尋ねてきた。食卓にある料理はJさんのものだと説明した後,Jさんに対するヘルパーの声かけとして,最も適切なものを1つ選びなさい。

大原も赤マル福祉も、正解は4の「一緒に作って食べましょう」なんですが、これは身体介護になるから完全にアウト。問題文を読んでも、軽度認知症という事からしても、明らかにヘルパーは身体介護ではなく家事援助で入っている。老計第10号 訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について

身体介護とは、(中略) 利用者の日常生活動作能力(ADL)や意欲の向上のために利用者と共に行う自立支援のためのサービス

とあるので、Jさんとヘルパーが一緒に作って食べるというのは身体介護になると判断せざるを得ない。

訪問介護はケアプランに従って行われるものなので、ケアプランに書かれていない事をヘルパーが行って介護保険料を請求してた場合は、その時間分については市区町村に返還しなければならない。つまり、絶対にやっちゃダメな事である。だから4の「一緒に作って食べましょう」と声を掛け、本当に、たとえば30分かけてJさんとヘルパーが一緒に作ったら、その30分は不正請求したのと一緒になる。

厳密には、「ADL向上を目指して利用者と一緒に料理を作る事が可能な状況であれば身体30分の生活30分で、無理だったら生活45分でサービスしてください」のような指示がヘルパーに出ていれば「一緒に作って食べましょう」も可能ですが、もしそうであれば、このような重要な条件を問題文で説明しないで」「察しろ」というのがおかしいですし、そうだった場合でも「一緒に作って食べましょう」を先に試みますから、この問題は成り立ちません。

訪問の現場に入れば、食卓にある料理を食べていいかどうかも判断できないほどの状態なら、一緒に料理なんて危なくてさせられません。(問題文は軽度の認知症とあるが、これでは明らかに進行した認知症。「こんな事も分からないのか」感があります) 料理は刃物も火も使う危険な作業という認識が無いのは困ります。傍にいても、包丁を持った手をフラフラ振り回したり、ガスの炎の中に手を入れたりします。こういう場合は家族と相談してガスの元栓を閉める、という対応を取る場合もあります。ADL向上が望ましいのは事実ですが、料理ができないからこそヘルパーが入っている認知症の人に、あえて一緒に料理をする事で、ヘルパーが居ない時に自分一人で料理を作ろうとして空焚きをやりかねず、それで近隣もろとも焼け死んだら元も子もありません。ADL向上なら料理以外ですべきです。ま…私は「問題作成者に逆らっても仕方ない。4と答えさせたいのだろう」と思い4にマークしましたが。

問38 「効果的な換気を行うために開ける窓として,最も適切なものを1つ選びなさい」は、4の「AとDを開ける。」を選ばせたいのでしょう。出題ミスとは認めないでしょうが、集合住宅の高層階では本物のヘルパーは絶対にAとDを開けてはいけません。条件に「窓の高さはすべて同じ」「家具は何もない。周囲に建物はない」ですから。高層階は風が非常に強いのでAとDを開けたら最後、部屋の中が「風洞実験室」のようになります。中の書類は一気に舞い上がり、「重要な書類が窓の外に飛ばされてしまった、どうしてくれる!」とクレームになりかねません。高層階では、一か所しか開けてはダメです。それも注意して。ですから、高層階では正解は1の「Aだけ開ける。」です。

問71 「高齢者の薬物代謝に関する次の記述のうち,最も適切なものを1つ選びなさい。」ですが、1の「消化管からの薬剤の吸収力は低下する。」も正解では。これは情報により食い違いがあるものの、「老化と薬物療法 Partー - 日本薬剤師研修センター」の教育ビデオの解説には内容として

・胃液酸度低  下酸性で溶解する薬物の吸収阻害
・消化管運動低下
 吸収遅延

とあります。

問78 ICFの環境因子に分類されるものを選べ。

2 電動車いすを使用していること
4 仲の良い友人がいること

2も4も環境因子ですね。「国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-」(日本語版)の厚生労働省ホームページ掲載についてによれば、

環境因子

第1章  生産品と用具
  e120  個人的な屋内外の移動と交通のための生産品と用具

第3章  支援と関係
  e320  友人

とあります。念の為に厚生労働省のホームページにある新旧対比表で下のレベルまで確認した所、以下のようになっており

e1201 個人的な屋内外の移動と交通のための支援的な製品と用具(福祉用具)
屋内外を移動するために用いる装置,製品,用具であって,改造や特別設計がなされたもの。例えば,歩行補 助具,特殊車両,改造された乗り物,車椅子,スクーター,移乗器具。

「電動車いすは環境因子ではありません」とする事は不可能。さりとて「友人は環境因子ではありません」とする事はなおさら不可能でしょう。問題作成者は ICF を理解していない事が明らかです。

こんな物を聞いてどうするのかと思う問題

問6 産休を取る際に医療保険から支給されるものが出産手当金だと介護職員は知っておけ、ですか、、、少子高齢化時代なので、こういう知識があった方が望ましいのは確かだが、これが介護現場で必要な知識とは思えません。介護福祉士の国試で、他の事柄を差し置いてまで問う必要がありますかね? 産休を取る際に人事担当者に聞けば済むような。

問8 なぜ介護職員が、厚労省が出した平成12年度と平成25年度の社会保障給付費の数値を覚えていて、増えたか減ったか何割になるかとか、そんな事を覚えなければいけないのか。

問17 この問題を作った人は、

「福祉関係三審議会合同企画分科会」が提出した「今後の社会福祉のあり方について(意見具申)」(1989年(平成元年)3月)の内容で、介護保険法の理念・仕組み等につながる事項として、適切なものを1つ選びなさい。

介護福祉士になる人間は、18年も前の1989年に「福祉関係三審議会合同企画分科会」とやらが意見具申した資料の内容をつぶさに理解しておかなければ駄目だと言いたいのか。ここまで来ると、もう「狂ってる」としか思えない。

問18 なんで厚生労働省の「2014年度 高齢者虐待調査結果」の調査結果の内容までつぶさに把握していなければいけないのか。翌年に順位が入れ替わったら、正解も変わるのか。

問21 「リハビリテーションには,名誉の回復の意味がある。」で答えましたが、もう、解いてて「※※か」と思いましたね。それを知っていると介護現場のリハビリで何の役に立ちますか。それとも介護職員は常日頃、名誉棄損をしているとでも?

問56 介護職員に「可処分所得とは何か」を計算させて、何がしたいわけ? これは介護福祉士の国家試験で聞くべき内容でしょうか? それとも介護職は全産業平均より月収で10万円低いから可処分所得が幾らか計算できるようにしとけ、という事?

問57 「美味しんぼ」ではあるまいし和食の基本的な配膳の位置なんか聞いてどうするの? 和食のマナーは介護福祉士の国家試験で聞くべき内容でしょうか。「奇問」「現場ではまず使わない知識」という意見も目にしました。利用者の好み・食べやすさ・嚥下能力・片麻痺など障害の有無に関わらず和食を出す場合は一汁三菜が基本で、選択肢5のように配膳しなければ正しくないと?

問70 年齢規定に関する記述で「道路交通法では,運転免許証の更新を受けようとする75歳以上の者に,認知機能検査を義務づけている。」を選ぶのですが…司法試験ではあるまいに何も道交法まで問わなくてもと思います。そもそも車が運転できる程に元気な高齢者は介護職員と関りは無く、問うのは無意味。

問74 甲状腺機能低下症の症状ですが、調べるとおもな症状は「だるい、やる気が出ない」「皮膚がカサカサになる」「寒がりになる、むくむ」だそうですが、血中のホルモン量を測定しないと診断が確定しないはずですが、介護職員が「この人、浮腫が出ています。甲状腺機能低下症に違いありません。心不全でも浮腫は出ますが、それではないでしょう」と診断をつけるのでしょうか?

問105 感染を起こしていない皮膚の創傷治癒を促す方法として,最も適切なものを選べ。4の「湿潤」を選ばせたいのだろうが、そもそも介護福祉士に、軽微とは言いかねる皮膚の創傷の治癒方法を聞いてどうするのか、グループホームで介護職がサランラップで治療しするなど違法な医療行為を奨励したいのか、理解に苦しみます。湿潤療法は、うまくやれば治りが早いものの、トラブルも多いことぐらいは知っています。(例: ラップ療法の合併症とその対策) 最大の疑問は「感染を起こしていない皮膚かどうかをどうして介護職で診断できるのですか」です。経験豊富な皮膚科の専門医なら、見ただけで診断がつく事もあるし、検査して診断を確定させる事もできますから、湿潤療法を使うか否かの判断もできるし、湿潤療法を使っていたが感染が起きたので直ちに中止し抗菌剤を塗布し従来治療に切り替え、という事もできます。治療方針は医師が判断すべき内容であり、介護職が決めたり口出しするのは絶対にすべきではない事柄です。湿潤療法はかつてNHKの「ためしてガッテン」で紹介されたようですが、高齢者は抵抗力や免疫力が落ちている場合もあるのに、これだと受験する側が「問題作成者は流行りの湿潤療法をイチ推ししたいのだろう」と判断して、正解というよりも出題者の頭の中の選ばせたい解答は何かを判断する「知恵比べ」のスキルが合格に欠かせなくなります。この設問は、著しく不適切に思います。ま…私は正解しましたが。

問109 介護福祉士が業として喀痰吸引等が可能と規定した法律は、「社会福祉士及び介護福祉士法」を選ばせる問題ですが、従来は医療行為は医師・歯科医・看護師しか認められていなかった医療行為ですが、社会福祉士及び介護福祉士法が改正され、

(保健師助産師看護師法との関係)
第四十八条の二
介護福祉士は、保健師助産師看護師法第三十一条第一項及び第三十二条の規定にかかわらず、診療の補助として喀痰吸引等を行うことを業とすることができる。

により、「日常生活を営むのに必要な行為」と政令で定められている喀痰と経管に関しては、介護福祉士が医療行為を業として行う事ができるようになった、というのがポイントなので、法律の名前だけ暗記しても現場では何の役にも立たない。さらに、ここでいう介護福祉士とは、第29回以降の国家試験に合格した介護福祉士に当てはまるのであって、第28回以前に合格した介護福祉士は含まれない (社会福祉士及び介護福祉士法を根拠として喀痰吸引等を行うことを業とすることはできない。なぜなら、実務者研修を受けておらず医療的ケアについて学んでいないから) というのも肝心なのですが…問題作成側も、この辺りをよく理解していない感じですね。

むしろ、「A介護福祉士の勤務先では、新たに喀痰吸引が必要な入居者を受け入れる事になった。適法に喀痰吸引を実施する体制を構築するためにはどのような手続きが必要か」のような知識を問う方がよほど実際的だと思います。

とにかく病気としか言いようのない、厚労省が何年にやった何たら調査の中身や数字に痛烈にこだわる問題が多い。厚労省時代にそういった統計を集計する業務を担当していた役人が問題作成者の中にいるのでは、とさえ思ってしまう。

なんだかなと思う問題

問15 成年後見制度の活用をケアマネに提案するを選ばせるのだろうというのは分かりますが、実際には成年後見制度は、地域を管轄する家裁次第で、うかつに利用すると非常に面倒な事になるし、実際問題として、今まで自分で管理していたが家賃の管理ができなくなったなら管理を不動産屋に委託という方が現実的でしょう。訪問介護事業所にできる対応が成年後見制度の活用提案だからといって、Eさん(88歳,女性)にとって最適、とも言いかねるので。権利擁護に関して立場上、制約があって真に最適ではない提案しかできないなら、提案すべきではないでしょう。家賃の管理ができない程度の軽い認知症で成年後見制度を活用するしかないという発想がおかしい。不動産屋に委託すれば済む話であるし、元々大半の家主はそうしている。

問65 「介護実践のプロセスをSOAP方式で記録する場合,pに該当するもの」ですが、SOAP方式とは看護用語であり実務者研修の範囲外の内容ではないか、介護の国試で出すのは出題ミスでは、と思います。その割に「pはプランかな?」で正解の5番が選べるので、何というしょうもないなぞなぞみたいな問題ですね。介護記録のつけ方に関する理解を問う問題の方が望ましかったと思います。

問102 基礎代謝量が980kcalっておかしくないですか? 身長151cmなら体重39kgは痩せであり、むしろ身長を二乗して22をかけた標準体重を元に考えるべきでしょう。そもそも、食事療法中の糖尿や腎臓病の人に調理あるいは購入して用意する食事の一回分の望ましいエネルギー量は幾つかを計算しなさい、等を聞く方が実際的。その場合は BMI を元に計算します。(体重は考慮せず、身長を二乗して係数を掛け算する)

問102ですと、痩せすぎで体重を増加を図る方が望ましい人でも、痩せているのだから大して食べさせる必要はない事になり、逆に、肥満で糖尿で痩せる事が望ましい人でも、太っていて基礎代謝量が高いからたくさん食べなさいというおかしな理屈になります。

問114 MRSA保菌者の在宅ケアだが、まずMRSAというと恐ろしい菌と考えがちだが、実はもはや常在菌になっている。

MRSAを含む黄色ブドウ球菌は,ヒトの鼻腔,口腔,咽頭,皮膚,消化管の常在菌である。一般健康者の1%,病院職員の5%が鼻腔にMRSAを保菌する。 (北大病院感染対策マニュアル)

最も適切と言われれば、「咳をしていないという条件であれば」という事で私は2の手洗いを選びましたが、試験のための問題という事ではなく、試験で出たことがそのまま現場で活かせるかと言えば、この問題では受験生に「MRSA保菌者など恐れるに足りず。身体介護する場合は手洗いさえすれば十分。スタンダードプリコーションなどは必要無く、手袋をするのは大袈裟。マスク、ガウンなどもってのほか」という浅い理解を与え、かえって有害な知識となりかねない。在宅で、介護の素人である妻が夫を介護、という事であれば手洗い以上の対策を要求するのは現実的ではないかもしれませんが、施設などで介護のプロである介護職の場合は蔓延防止のために MRSA 保菌者に対し「手洗いすればOK」とはしていない所も多いのでは。

知恵袋でも、条件をはっきり書かずに質問する「察してチャン」が多いです。質問している人間は分かっているのだろうが、解答して欲しければ必須な情報、例えばタブレットPCの機種名が書かれていないので質問を読んだ側が文面から推測や仮定をしなければ解答できない悪問です。介護福祉士の国家試験の問題作成者も、状況説明における条件をはっきり書いていない質問が多く、科学的な物事の考え方のできない「察してチャン」が多いのは驚きです。


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