Last modified: Tue Oct 3 16:10:49 JST 2017
[介護関係情報に戻る] [知恵ノートのトップに戻る]民進党の初鹿明博衆院議員が質問主意書を提出しました。
公明党の伊佐進一議員 「介護の現場は人材不足で大変なことになっていて、政府は2025年までに38万人の人材を増やす政策を取っている。心配なのが介護福祉士の国家試験でその受験者数が半減している。これは想定していたことなのか?」と質問。
塩崎恭久厚生労働大臣 「受験資格が法改正によって3年以上の実務経験を経た場合は実務者研修が必要となった。受験者減少の要因は今回の変更を見据えた駆け込み需要による半減もあったのでは。見直しは質の高い人材提供を目的としたもので今後共室の高い人材の確保に取り組まなければならない」とした。
介護医療院 介護福祉士国家試験受験者数 国会質問2017.2.17
半減は駆け込み受験の反動が理由だそうで
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あのおぉ・・・大臣の答弁って、議員からあらかじめ答弁書をもらっていて、厚労省のエリートのお役人さんが答弁原稿を作るんですよね? 大臣に恥をかかせないように。でも、以下の程度のグラフなら受験生した人間の一人が昼休みに作成できるんですけど。
そうですかぁ、駆け込み受験は何と7年前から始まっていたんですか。 よく判りました!
回数 | 受験者数 | 20回 | 142765 | 25回 | 136375 |
16回 | 81008 | 21回 | 130830 | 26回 | 154390 |
17回 | 90602 | 22回 | 153811 | 27回 | 153808 |
18回 | 130034 | 23回 | 154223 | 28回 | 152573 |
19回 | 145946 | 24回 | 137961 | 29回 | 76323 |
去年と一昨年の受験者数より、7年前の22回および6年前の23回の受験者数の方が多い。それに、掛け込み受験は考えにくい26回の受験者数も、去年と一昨年の受験者数とほぼ一緒。よって、駆け込み受験の反動という説は明らかに事実に反する。この程度すなわち数が多いか少ないかの比較なら、足し算や引き算ができない小学1年生の算数の授業の問題で出してもほとんどの児童が正解するのではないか。
→ 厚労省の受験者減という問題に対する対応能力はゼロと判断せざるを得ないでね。駆け込み受験の反動なら、無為無策でも翌年度には持ち直すことになりますが。でも、減少が駆け込み受験の反動ではなく、翌年度に持ち直さなかったらどうなります? 国会で国民に対して※をついた、というか※の答弁原稿を役人が大臣に出したことになってしまいますが、いいのですか?
現在は2月の終わり頃ですが、3月・4月・5月と、あと3ヶ月と少しで6月になり、第30回の受験要項が発表、願書送付が始まります。8月に願書受付開始、9月上旬に締め切り、実務者研修の修了の最終リミットは恐らく今年度と同じで年内。ここで2017年1月1日から12月31日までに新たに実務者研修を修了し実務経験ルートの受験資格を得る人がどれだけ加わるかを考えれば、来年の今頃 (2018年2月) は「あれぇ? 第29回は掛け込み受験による反動で減ったんでしょ? 何で第30回は受験者数が戻るどころか更に減っちゃったんだろう・・・」と首を傾げている事でしょう。厚労省のエリートのお役人さん達が受験者激減の理由を理解でき「これはまずい」と危機感を持てるだけの認識を得られるのは、第31回が終わる頃でしょうね。
はっきり言って、完全に介護福祉士離れを招いたって理解できない訳です。研修自体は全否定はしませんが、自腹で10~20万円払って450時間の研修を仕事を休んで受けろ、そして受験料は13140円、変な問題が出るので実務者研修のテキストじゃダメで受験対策本を自腹で何冊も買わないといけない、仕事しながら受験勉強、合格したら登録料1万円払え、でもそこまでして介護福祉士になっても元が取れるほど給料が上がらない。このために、介護職員が介護福祉士になるのを諦めさせてしまった。これほど割に合わない事をする位なら、450時間、働く方がずっとお金になりますよね。何でこんな惨状で皆が介護福祉士を目指すと思うのかな。お役人さんたちは、受けやすい環境作りはしていると連呼していますが。
厚労省による情報だそうです。後のほうでリンクしている産経報道をご覧ください。
厚生労働省によると、1月29日に筆記が行われた国家試験の受験者数は7万6323人(暫定値)で、27年度の15万2573人から半減。 (産経新聞より引用)
見事なクズっぷりですねぇ…「俺達は既に介護福祉士になったから難化したって関係ない、介護福祉士になる人間が減るのは大歓迎、そのぶん俺達の待遇が上がる」という、自分の事しか考えられない既得権固守団体ですね。自分達の利益だけじゃなくて、もっと日本の福祉の事を考えようよ。
レベル確保とか言っていますけれど、あんたたち (日本介護福祉士会に所属の既存の介護福祉士) のレベルはどうなのかと言いたいです。医療的ケアなんか学んでいない&実務者研修総相当の講習も受けてない人間が大半だろうに。そんなにレベル確保が言いたければ、日本介護福祉士会に所属の介護福祉士は、たとえば5年間は暫定的に介護福祉士を名乗る事を認めるが、5年以内に実務者研修を受けて再度、国試に合格しなければ准介護福祉士と名称を格下げすべきだと言ったらどう返事しますか。「ふざけるな!」でしょうか。
※長たらしいPDFなので、興味のある方のみご覧ください。
2005年頃はそういう動きもあったようですが、(2006年度介護職員基礎研修内容 All About)平成23年1月20日の今後の介護人材養成の在り方に関する検討会 (pdf) には
このように、質の高いサービスの提供と、介護人材の確保という二つの目的を両立させていくという観点からは、介護福祉士割合については、当面5割以上を目安とすることが概ね妥当ではないかと考えられる。
とあります。2005年頃の事情は良くわかりませんが、少なくとも現時点では、介護職をするには介護福祉士を必須とする、を目指せる賃金ではないでしょう。今後ですが、介護予防・日常生活支援総合事業では、無資格者やシルバー人材、ボランティアに介護を担わせようとしている位ですから、いっそう「介護の仕事をする人間は全員が介護福祉士になるべき」から遠ざかると思います。厚労省の最近の資料などを見ると、介護福祉士も現場では無資格者と変わらずに同じような仕事をしているのを問題視しているようで、もっとリーダー的な仕事をやれ、と要求していますね。
※病院で、看護師ではなく無資格者に看護して欲しいと思う人は居ないでしょうが
介護福祉士には介護職員のリーダー的な仕事をさせると方針が変わったなら、確かに「質の向上」を求めはするものの、数はそれほど増えなくてもいいと方針を転換している可能性があります。
実務経験ルートでは、実務者研修を受けた人数以上に国家試験を受ける事はありませんから、実務者研修の修了者の累計が衝撃的な少なさである事が確実になったから、大慌てで受験要件を緩和という虚しい悪あがきをしたに違いありません。そしてどんなに遅くとも、9月半ばには、受験申し込みをした人数は把握できていた筈です。ですから、受験者数半減というのは、9月の段階で分かっており、既に大問題だった筈です。なぜ速やかに事実の発表、現状把握、対策検討を始めなかったのでしょうか。
下手な考え休むに似たり、ではありますが、予想してみました。これらの情報から
今年の8万人の内訳を推定してみます。
福祉系高校の受験者は毎年3000人ほどで変化は無いとする。なお、ほぼ全員が国試に合格するとの事。
養成校は猶予付きではあるが国試が必要となった。ラフな想定だが、全員が国試を受けると仮定すると、2017-01-29 の国試を受けるのは昨年度の入学生だから、新聞のグラフから9000人程だったと推定。
よって今年の国試の受験者8万人のうち、実務経験者ルートは68000人程であったと見積もる。
2013年4月に実務者研修が開始し、今回は2016年12月末の修了者までが受験資格があった。よって、その期間は44カ月で、研修期間は半年と決められていたが2016年春よりヘル2などを所有していれば1カ月でも良いことに変更されたので考え方が難しいが、大雑把に平均で出すと、毎月1550人の実務者研修の修了者が誕生している。
今回の試験も例年同様に合格率6割と仮定すると、48000人が合格で32000人が不合格。合格した48000人は来年は国試を受験しないとする。一方、不合格となった32000人は、来年に国試を受験する可能性があるとする。
実務者研修の修了者が毎月1550人とすると、来年の国試までに新たに受験資格を得る実務経験ルート者は18000人。よって、来年の試験での初挑戦者組は
実務経験ルート | 18000 |
福祉系高校 | 3000 |
養成校ルート | 9000 |
と見当をつける。合計で30000人である。
後は、今年は不合格であった32000人、それに、今年は実務者研修が間に合わない、その他の理由で受験を見送った実務経験者がどの程度、来年の国試を受験するか次第である。多忙で受験勉強の時間が捻出できる見込みがないなどで見送る可能性もあるが、仮に全員が再挑戦するとしても、受験者数は初挑戦者組と合計しても620000人となる。変動要因も考えると、6万人を割り込む可能性もある。(5万人割れもあり得ると思います)
今年は昨年に比べ受験者数が半減したが、それでも来年の受験者数を、今年と同じ8万人に持っていくだけでも、2017年中に、これまでの倍のペースで実務者研修修了者を生み出さなければいけない計算になる。
来年度の受験申し込みである2017年の8月まであと半年と少ししか無いので、来年度に関しては「もう手遅れ」でしょう。今から大慌てで実務者研修を受けやすくする思い切った大盤振る舞いの対策を講じたところで、新たな実務者研修の修了者はタイミング的にそうは増えない。それどころか現時点では実務者研修を受けやすい環境にする策を全く打ち出していないのだから、という事。
憶測に憶測を重ねて恐縮ですが、仮に
と仮定すると、
これを足すと、受験者数は49800人と出ました。
さらに「介護福祉士ではない介護職員で、実務者研修を受ける意欲がある・受けられる環境の人は多くが44カ月の間に受講してしまった」可能性もあります。
44カ月間の「貯金」を一気に吐き出してなお8万人割れでしたが、今後は取り崩せる貯金も底をつきます。それで私の人数予想が当たるかどうかは別として、無策でいれば「来年はもっと減る」「再来年はさらに減る」のは確実と思われます。
「実務者研修の必須化で介護福祉士離れを招いた」のは数字ではっきり出ました。介護福祉士の制度変更に責任のある立場の人たちは、どのような対策で挽回するのでしょうか。
思えば2013年頃は不況で、かつ介護は人手不足で将来は成長産業になる事間違いなしという「希望」がありました。しかしその後、介護報酬の減額もあり、介護事業者の倒産も増え、すっかり斜陽産業となってしまいました。他産業は景気回復で求人倍率も回復している中、低い賃金のままなら介護福祉士離れになるのは当然でしょう。
介護福祉士国試の受験者半減 厚労省「補助の積極活用を」 新施策は来年度に検討に報道されていましたが、酷いとしか言いようがありません。
10日に開催した政策説明会では、必要となる費用を補助する既存の制度を改めて紹介。集まった自治体の担当者に対し、「積極的な活用をお願いしたい」と協力を要請した。
平成20年度は費用を補助する制度は国の事業でした。それを、国が費用を出したくないから都道府県に押し付ければ、地方行政の都合次第になるのは当然でしょう。拙著47都道府県介護福祉士実務者研修学資金貸付制度リストにある通りですが、補助する制度は実質、無いに等しい状況で、それを、丸投げした国が今まで都道府県を管理しないで任せっきりにしておいて、受験生大幅減を招いて、今さら「積極的な活用をお願いしたい」と協力を要請ですか。だったら、平成20年度だけでなくそれ以降も、国として助成制度を完備すべきでしたね。